三十三銀行
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M&A PROJECT

ハッピーリタイアを支え、
異業種参入の夢を叶える。

所属は取材当時の情報です。

みなさんはM&Aという言葉に、どのようなイメージを持っていますか?
ドラマなどの影響で「敵対的に買収する」といった、ちょっとネガティブなイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし今、経営者の高齢化と後継者不足が社会問題となる中、事業を存続するための手段としてM&Aを友好的に活用する事例が増えています。
その案件一つひとつに、地元企業の経営者の気持ちに深く寄り添い、親身になって支える、地方銀行ならではの物語があります。
ここに紹介するプロジェクトストーリーにも。

  • 竹原 修也の画像

    支店
    支店長

    竹原 修也

  • 上山 和則の画像

    支店
    取引先課長

    上山 和則

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    本部
    コンサルティング営業部

    柴田 塁

  • 大橋 敬廣の画像

    本部
    コンサルティング営業部

    大橋 敬廣

Interview 01 社長と交わした、2つの約束。

「実はね、もう年だし、そろそろ経営から身を引こうと思うんだ。でも、後継者がいなくて。」A社の社長(70代)からそう打ち明けられたのは、当時、A社近隣の支店で取引先課長を務めていた竹原でした。

「A社は大手メーカーの一次下請けとして安定経営を続けていた、創業約半世紀の歴史ある会社です。当行はメインバンクとして日頃から社長とお会いし、さまざまな話をしていました。その中でM&Aによる会社の売却のご相談をいただいたのです。」(竹原)

経営者は、悩みを誰にでも相談できるわけではありません。背景には、時間をかけて築いてきた信頼関係があります。

「ご相談いただけたことが、まずうれしかったですね。社長と普段から対話を重ね、何でも話していただける関係を築いてきたからこそだと自負しています。」(竹原)

社長は「買手企業の選定に関して、特に希望はない。任せるよ。でも、2つだけ約束してほしい。」と言いました。1つは、従業員の雇用を守り、待遇を維持すること。もう1つは、取引先に迷惑をかけないこと。託された思いを胸に、竹原は本部のコンサルティング営業部へこの情報を伝達。銀行業界ではこれをトスアップと呼びます。そして竹原の上げたトスを受け、買手企業の発掘に取り組んだのが、コンサルティング営業部でM&A業務を担当している柴田でした。

Interview 02 思いもよらない企業が関心を。

柴田は以前、M&A業務の習得のために、メガバンクへトレーニーとして出向し、M&A業務を担当した経験を持ちます。そこで培った専門知識とスキルを生かし、各支店をサポートしています。

「コンサルティング営業部が管理するシステムには、全支店からの売却ニーズ情報・買収ニーズ情報が日々上がり、集約される仕組みになっています。まずは数多くの買収ニーズ情報の中からA社の買手候補としてマッチしそうな十数社をリストアップし、アプローチしました。」(柴田)

A社が大手メーカーの一次下請けであることから、柴田は製造業の企業を中心に選び、1社1社、打診していきました。しかし、どの企業も反応は芳しくありません。

「お断りが続くと、やはり気持ちが沈みそうになります。しかしそこで折れることなく、実直に取り組み続けることが、当たり前のことではありますが、大事だと考えています。」(柴田)

1社、また1社と買手候補への打診を続けた結果、ついにA社の買収に興味を示す企業が現れました。それは意外にも製造業ではなく、他業界の企業B社でした。

Interview 03 議論を重ね、次の一手へ。

B社の買収ニーズ情報をつかみ、本部へトスアップしたのは、B社近隣の支店で取引先課長を務める上山でした。

「B社はサービス業を主に行う会社ですが、自ら本業と全く異なる会社を立ち上げるなど、事業意欲の旺盛な社長が経営しています。社長は元々クルマやバイクをいじるのが大好きで、モノづくりに対して非常に強い思いを持っていました。しかし自分で製造業の会社を立ち上げるのは大変なので、M&Aを活用したいというご希望でした。」(上山)

そして上山のトスを受けたのが、当時、コンサルティング会社に出向していた大橋です。B社のアドバイザーとしてこのプロジェクトに参加し、実際にB社の社長に会い、条件や金額についての考えを伺い、柴田との議論も重ねました。そして手応えを感じた大橋と柴田は、次の一手を打ちます。

「A社とB社の社長に『一度両社でお会いしてみませんか』とオファーさせていただきました。経営に対する考え方や、今後の方針を話し合うことで、距離が縮まるのではないかと考えたのです。」(大橋)

Interview 04 ついに両社が合意。しかし……。

いよいよA社とB社の社長が対面。その場に売手企業側のアドバイザーとして柴田が、買手企業側のアドバイザーとして大橋が同席しました。話し合いは和やかな雰囲気で進みます。

「話し合いの終盤、B社の社長に『いかがでしたか』と伺うと、『やはり興味はあります。社長の人柄の良さも伝わったので、前向きに考えていきたい』とおっしゃっていました。」(大橋)

「A社の社長からも『今までとまったく違う業種から、モノづくりの分野に新規参入してこようとしている。その心意気はすごくうれしい』という発言がありました。」(柴田)

一歩前進。その後、B社から意向証明書が提出されました。

「意向証明書は、買収する意向があることを証明する書類です。この書類を提出いただけた時は、大きく前進したことを実感しました。口頭でお互い好感触でも、それだけではまだどうなるか分かりませんから。」(柴田)

さらにその後、A社・B社の間で基本合意書が締結されます。決定した内容を双方が確認する書類です。通常であれば、この後ほどなくして株式譲渡契約書を締結し、M&A成立という運びとなります。しかしこのプロジェクトには、まだ波乱が待っていました。

Interview 05 売手・買手への1年に及ぶケア。

両社はM&Aに合意しました。しかし、このプロジェクトストーリーは終わりません。B社社長の希望により、株式譲渡契約は1年先に行うことになったのです。

1年先になったとしても、1年待てばよい話。それほど問題ないのではないか、と思われるかもしれません。しかし、そうではないと上山は言います。

「企業を買収するということは、たくさんの従業員を引き受け、一人ひとりの今後の生活や人生を背負うということ。一旦決断しても、そこから時間を置くことでプレッシャーや不安が大きくなり、迷いが出るケースがあるのです。」(上山)

上山の心配は的中してしまいます。B社社長は一時、大橋に買収を取りやめる意思を伝えたこともありました。

「いろいろ考えたけど、買収を見送りたい、と。異業種に参入する不安と、金額の面が理由とのことでした。『社長、異業種参入への不安はよく分かります。しかし、モノづくりは社長の長年の夢だったんですよね。金額の面については売主側と再調整してみましょう。』そうお答えし、条件の調整を続けました。」(大橋)

大橋による調整の結果、B社社長は買収をもう一度決断。大橋はその後も定期的にB社を訪問してコミュニケーションを取り、最良のパートナーとして社長を支え続けました。

さらに大きな不安を感じていたのは売手企業A社です。せっかく売却先が決まったのに、ここで破談になったら……と心配するA社を、柴田は親身になって支えました。

「特に社長の奥さまが心配されていました。眠れない日もあると……。安心していただけるよう、こまめに訪問して状況をお伝えしていました。継続してお客さまを支えることの大切さを、改めて実感した1年間でもありました。」(柴田)

Interview 06 忘れられない、安堵の笑顔。

A社から相談を受けて、約1年半が経ちました。紆余曲折を経て、ついに株式譲渡契約の日を迎えます。

「午前中に調印した後、昼食会を催しました。忘れられないのは、A社社長の奥さまの笑顔ですね。B社社長の『1年間、お待たせしましたね』という言葉に、心から安堵した、という笑顔でうなずいていらっしゃいました。この1年間は、本当に気が気でなかったと思います。」(柴田)

「奥さまは本当にほっとされていましたね。元々社長と奥さまの2人で、自宅の小屋に機械を持ち込んで始めた会社。そこから苦労して大きくされました。工場から電話がかかってくると、まず『何か事故が起こったのではないか』という心配が頭をよぎるし、常に気が休まらない。数十年ずっとそうしてきたので、早く信頼できる誰かに託したい。奥さまからそのようなお話を以前、伺ったことがあります。だから我々としては、とにかく円満に次代に託すお手伝いがしたいという気持ちと、苦楽を共にしてきた従業員の雇用、培ってきた技術を守りたい。その思いでがんばってきました。柴田君に感謝していましたよ、よくB社を見つけてきてくれたと。」(竹原)

「B社の社長は『ついにモノづくりに携わるという夢が叶った』と喜んでいました。ITを導入して効率化し、さらに大きく育てることができたらと、その先の夢も語っていらっしゃいました。」(上山)

「M&Aは成約に至るまでに時間を要します。その間、さまざまな壁も立ちふさがります。それらを乗り越えて成約に至ったときの達成感は、何度味わっても格別です。」(大橋)

Interview 07 コロナ禍でも守られた約束。

B社がA社から引き継いだ事業はその後、どのような展開を見せたのでしょうか。

「実はM&Aが成立した直後にコロナ禍が社会を覆い、B社の新事業も影響を受け、厳しい船出となりました。しかし、幸いなことに本業は影響を受けていません。そして約束通り、元A社従業員の雇用も守られています。今後の生産計画では、新事業も回復していく予定です。」(上山)

「地域の方々の雇用を守るお手伝いができたこと、そしてM&A成立後もお取引が続いていくことは、銀行員として、とてもうれしく思います。」(大橋)

「今後もお客さまのお悩みをお聞きし、支店と本部が一体となり、解決のお手伝いをしていくという役割を果たしていきたいですね。」(竹原)

「合併によりお客さまが増えたことで、M&Aだけでなく、ビジネスマッチングの幅も広がりました。そうした強みを生かして中小企業支援をより充実させることで、お客さまとのリレーションがさらに深まることを期待しています。」(上山)

「三十三銀行は、東海圏から近畿圏にわたる幅広いネットワークを有しています。地域によって産業特性は違うので、今回のような業種を超えたM&Aの相談は増えるでしょう。このような当行の強みを、うまく活かしていきたいと考えています。」(柴田)

「三十三銀行には、外部の連携先もあります。活用できる専門スキルやノウハウを最大限活用し、お客さまに提供するソリューションの質を高めていきたいですね。」(大橋)

三十三銀行が目指す「地域経済の活性化に貢献する『質の高い地域ナンバー1銀行』」に向け、行員たちと地域のお客さまが紡ぐ物語は、これからも続いていきます。